モントットーネ村から

第一号

2003年11月21日

 みなさん初めまして、ニュースメール『モントットーネの日々』の発行者、飯田亮介です。今、パソコンの画面に向かい、小学校の壁新聞を書いた時にも似た、何やらなつかしい胸の高鳴りをおぼえています。記念すべき第一号、やはり、題名にあります「モントットーネ村」の簡単な紹介から始めましょう。それから、予告号にありましたように右の写真の場所の説明に移りたいとおもいます。

 まず、地理の時間にお使いになった(小中高生の読者の方は、今もお使いの)地図帳を開いてイタリア半島のページを探してみてください。おもちでない方は、類似の地図をお開きになるか、頭の中に長靴の形をしたイタリア半島を漠然とで構いませんので、思い描いてみてください。
 さて、地図は見つかりましたか?
 いま初めて、イタリアの正確な位置を認識された方も多いのではないでしょうか。恥をさらすようですが、かく言う私もこの国に来るまで、イタリア半島と言うものはギリシアの右あたりにあるものとばかり思っていました。勘違いとは恐ろしいものです。当時の私の頭の中では、地中海に面した南欧諸国が「スペイン・フランス・ギリシア・イタリア・トルコ」というとんでもない順番で並んでおったわけです。
 次に、半島の半ば左側にあるイタリアの首都、ローマを探してください。
そして、ローマから半島を東に(右に)横断し、東海岸のアドリア海に面したアンコーナ(またはアンコナ、Ancona)という地名を探してみてください。見つかりましたか?ひょっとすると、アンコーナのすこし南に(「すこし」と言っても、じつは200キロ位は離れていますが)ペスカーラ(またはペスカラ、Pescara)という地名もあるかも知れません。私の新詳高等社会科地図(昭和64年版)にはp56,p62,p64の三ページに両方の地名があります。
 私のくらすモントットーネ村は、この二つの町を結ぶ線のちょうど真ん中のあたり、海岸線から20キロばかり内陸にあります。おそらく、日本で発売されているどんな地図にも、旅行ガイドにものっていないと思います。

 村民総数1111人。なんだか嘘のように切りのいい数字ですが、本当かどうかは村長に聞いてみてください。多分、独身50代のせつなさを漂わせたいつもの赤ら顔で、Boh?「ボオゥ?(さあねえ〜)」としか答えてくれないと思いますが。そのあとで、「日本の女性はとてもやさしいってのは本当か?」など聞いてくるかもしれません。いや、まず聞いてきます。「村長、時代はかわったよ…」などと彼の夢を壊すような答えはなさらないでください。なにせ、独身イタリア男のロマンですから。
 「ジュリアーノ(小さな村の村長なので、ためぐちです)日本に行ったらあんたも、ロバート・デ・ニーロみたいに大もてだよ!」てな具合に、軽くおだててやってください
 多分、カフェで酒の一杯はおごってくれると思います。いや、二杯はかたいと思います。
 そんなSimpaticone・シンパティコーネ(気の良い奴)、ジュリアーノ村長がしきるモントットーネは、ブドウ畑とオリーブ畑、麦畑とヒマワリ畑にかこまれた、丘の上のちっぽけな村です。教会が三つに床屋も三軒、小さなスーパーマーケットとカフェ(BAR-「バール」と呼びます)がそれぞれ二軒、あとは新聞雑誌のキオスクが一軒あります。アンコーナを州都とするマルケ州のごくありふれたPaese「パエーゼ(村)」です。

 「パエーゼ」という言葉には、「国」という意味もあります。どこのイタリア人でも大概そうですが、ここの住人にとっては「おらが国、おらが里」のモントットーネが、それこそイタリアよりももっと大切な、ひとつの「国」なのです。
 さて、わたしがこの「国」に住むことになったのは、そこがイタリア人妻の故郷だからです。なぜ、私がイタリア人と結婚することになったのか、、、なれそめなどは、その内おいおい、お話しさせて頂きます、、、

   気づけば、ずいぶん長いメールになってしまいました。写真の場所、Foce・フォーチェ村の谷の説明は短く済ますことにします。
 そう言えば、一枚目の写真のなかに小さく見える人影が我が妻です。小さいですね。実際、小さな人なんです。
 モントットーネ村から車で西に一時間ばかり行くと、イタリア半島の背骨アペニン山脈(地理の時間にならいましたね?)の東斜面にぶつかります。そこで、二千メーター級の山々が左右に迫る狭い峡谷の道をまた少し車で走ると、いつか目の前にみどりの草原が広がります。そこがフォーチェ村の谷です。一枚目の写真の場所は村の集落から少し歩いた場所です。妻とふたりでそこに散歩に出かけたのは、十月の末の土曜日だったと思います。草原は牧場でもありまして、羊の群れを追い立てる羊飼いに会うこともあります。羊と言えば、羊の乳のチーズPecorino・ペコリーノは絶品ですね。特に細かな穴がいっぱいあいていて、ふわっとした食感のペコリーノの熟成チーズStagionato・スタジョナートは最高です!
 「日本においしいピザがあるわけない!」と(妻も含めた)イタリア人に威張られると、「うそだ!」と反論したくもなりますが、このペコリーノ・スタジョナートはどうも、ここにしかないようです。「うそだ!」と思った方は、マルケ州までおいで下さい。美味しいワインとチーズをそろえて、お待ちしております。


モントットーネ村より、
飯田 亮介


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